JST CREST
新たな光機能や光物性の発現・利活用を基軸とする次世代フォトニクスの基盤技術(北山 研一 統括)
殆どが水よりなるフォトニック結晶の開発と応用(代表:石田 康博)
フォトニック結晶は光の性質を操る究極のツールであり、次世代光学材料の最有力候補です。「結晶」の名の通り、数百nm周期の高秩序構造でなければならないため、通常は固体材料で構成されます。フォトニック結晶の科学は長らく、格子のサイズや方向が変わらない(変えられない)ことを前提としてきました。一方で自然界には、細胞質などの流体よりなる動的なフォトニック結晶を巧みに使う生物(熱帯魚やカメレオンなど)が存在します。彼らは、環境に応じ自らの体色を高速かつ自在に変化するなど、静的な固体に基づく人工のフォトニック結晶では到底不可能な、動的フォトニック機能を発揮します。ならばもし、水のような流体を主体に、高秩序の動的フォトニック結晶を構築できたらどうでしょうか? 従来の静的フォトニック結晶では想定すらされていなかった種々の特性が実現され、基礎・応用の両面に革新をもたらすのは間違いありません。
私たちは異方性ソフトマテリアルの研究の途中で、99%の水と1%の無機物からなるフォトニック結晶を偶然に見出しました (Nat. Commun. 2016, 7, 12559)。これを元に、佐々木 高義 先生 (物材機構)・荒岡 史人先生 (理研) とともに提案した本課題が2017年に採択され、現在に至ります。「フォトニック結晶は固く動かない」「フォトニック結晶は生体と混ざらない」という常識を覆す、革新材料の開発を目指します。